香川県琴平町、高松市、東かがわ市で、根付いた伝統とものづくり文化を体験
「伝統は進化させながら残すもの」
老舗染物屋の四代目がこだわる讃岐の手仕事
ふたりの伝統工芸士が
手がける「讃岐のり染」

金刀比羅宮のお膝元で1912年に創業した「染匠 吉野屋(せんしょう よしのや)」は、香川県の伝統的工芸品「讃岐のり染」を受け継ぐ染物屋。餅米でつくったのりを使い、筒描きや型紙で布に模様をつけ、生地を引っ張りながら刷毛で染料をのせるのり染は、鮮やかな色合いが特徴。吉野屋では、香川県伝統工芸士に認定されている大野篤彦さんが、暖簾(のれん)や半纏(はんてん)、幟(のぼり)、幕などを手がけている。京都の大学で日本画を学び、地元企業でデザイナーをしていた篤彦さんが、家業に就いたのは20年前。最初の10年は伝統工芸士で父の等(ひとし)さんに技術を学び、この10年は伝統を未来へと受け継いでいくために、新たな取り組みも展開している。
そのひとつが、のり染体験の受け入れ。「家紋などをモチーフにした型を使い、袋物を染める体験は、誰もが手軽に挑戦できると好評です」と篤彦さん。また、地元で栽培した藍を使った「讃岐正藍染」プロジェクトも進行中。さらに、工房では「こんぴら歌舞伎」の幟も第1回公演から製作しており、幟で仕立てたトートバッグは琴平らしい土産として人気を呼んでいる。「伝統は進化させながら残すもの」という思想で、染匠の新たな道を拓いている。

創業当時より上絵師(家紋を描き入れる職人)でもあった吉野屋。のり染体験では大切に保管されている紋帳から家紋を選定し、型紙を制作している

鮮やかな色合いが目をひくのり染のバッグ類。こんぴら歌舞伎の幟で仕立てたKONBAGは、同じ柄はない唯一無二の商品だ
染匠 吉野屋
住所/香川県仲多度郡琴平町277
TEL/0877-75-2628
営業時間/9:00〜17:00(受付は〜16:30)
定休日/不定休(1週間前までの予約制)
駐車場/あり
HP/http://kotohirayoshinoya.jp
instagram/琴平 染匠吉野屋
※染色体験(ランチトート)4,400円〜

歴史が育んだ菓子木型と讃岐和三盆糖
香川県ならではのふたつの文化を伝えたい
口のなかでほろり
繊細で奥深い味わい

江戸時代からの歴史をもつ讃岐和三盆糖は、地元で栽培されたサトウキビからつくられる高級な砂糖。製菓や料理に使われるだけではなく、木型で押し固めて干菓子として味わうことができる。元パティシエの上原あゆみさんは、現代の名工(※)である父・市原吉博さんが彫る菓子木型と、職人が手間暇をかけてつくる和三盆の魅力を広く伝えたいと、2009年に「豆花(まめはな)」を開いた。「当時から直島で芸術に関わる仕事をしており、菓子木型からアート性を感じたことも理由」と話す。
和三盆を水で練り、色付けをして型で抜く干菓子づくりは、お子さまでも挑戦しやすい。ほろりと口のなかで溶ける食感は、できたての干菓子ならでは。お抹茶とともに味わえば、やさしい甘さが引き立つ。洋菓子のような複雑な工程はなく、とても簡単かつ味わい深い。その上、見た目も愛らしい。「工芸と食、讃岐のふたつの文化の融合を楽しんで」と微笑む上原さんだ。
※現代の名工…ものづくりで卓越した技能を持つ職人を厚生労働大臣が表彰する制度

(右上写真)出来上がった干菓子は、お土産にしてもOK。練りきりづくり体験も受け付けている
(左写真)古民家をリノベーションした店舗は、香川県在住の美術家が空間デザイン。アーティスティックな雰囲気のなか、体験ができる

「豆花」の近くには、日本でも数名しかいない菓子木型職人である吉博さんの工房兼ショールームがある
豆花
住所/香川県高松市花園町1-9-13
TEL/090-7575-1212
営業時間/10:00〜17:00(受付は〜16:00)
定休日/木曜
駐車場/あり
HP/https://www.mamehana-kasikigata.com
※和三盆・練り切り体験各2,000円、両方3,000円

「日本一の手袋のまち」らしい体験
世界にひとつだけのマイ手袋づくり
自分で考えたデザインで
オンリーワンの手袋を

東かがわ市は、手袋の国内生産シェア90%を占め、明治時代からの歴史を誇る手袋のまち。戦後、おしゃれ防寒手袋を欧米に多く輸出していたが、徐々に品質や機能性の高い商品づくりへとシフト。現在は、各メーカーが特徴を活かしたものづくりに取り組んでいる。「野球やゴルフなど、誰もが名を知る有名プロスポーツ選手の手袋も、東かがわ市でつくられているものが多いんです」と東かがわ手袋観光振興会の大字(おおじ)正数会長は話す。
そんな東かがわ市の地場産業に触れられるのが、観光交流拠点「讃州井筒屋敷」の「てぶくろ工房 縫い子さん」。無地の手袋を、ビーズやレース、ボタンなどのパーツで飾り付けて、世界に一つだけの手袋をつくることができる。「あれこれとデザインを考えるのも楽しい。体験を通して、ものづくりのワクワク感を味わい、同時に手袋のまちを知ってほしい」と大字さんは願う。

多彩に揃った飾り付け用のパーツ。針と糸を使って、パーツを手袋に縫い付ける

(左上写真)スタッフの手ほどきを受けながらつくる手袋には愛着もひとしお
(右写真)江戸時代から醤油や酒造りをしていた商家を活用した「讃州井筒屋敷」
讃州井筒屋敷
てぶくろ工房 縫い子さん
住所/香川県東かがわ市引田2163
TEL/0879-23-8550
定休日/日曜・祝日10:00〜15:00(予約制)
駐車場/あり
HP/https://sansyuidutsuyashiki.com/experience/
instagram/讃州井筒屋敷
※体験料手袋代+600円

※掲載価格などは、変更される場合がございます。
※駐車場ありには有料や提携、近隣の公共駐車場も含まれます。